弁護士コラム

2011/07

成長の余地

日向 誓子

 今年も暑い夏がやってきました。

 1月に事務所に入所してから、早くも7か月が過ぎました。

 最初の3か月ほどは、自らの「弁護士」という立場にも緊張し、打ち合わせにいらした依頼者の方から、「新人さん?がんばってね。」とお声をかけていただくこともありました。

 早く一人前に見ていただけるようにならなくては、と気持ちばかりが焦りましたが、先輩弁護士や事務員さんたちに支えられて業務に励むうちに、最近では、ようやく新人の固さがとれてきたかなと思っております。

 この7か月の間に、少年事件を何件か担当させていただきました。 
少年法は、少年は未熟でまだ人格的に発展途上であり、適切な教育・処遇によって更生することができる柔軟性を持っているという考え方から、非行を犯した少年に対して成人とは異なり、「刑罰」というペナルティーを課するのではなく、性格の矯正や環境の調整を図る「保護処分」を行うものとしています。

 そして、少年事件に関わる弁護士は「付添人」と呼ばれ、少年に寄り添って、非行の原因を探り、立ち直りに向けた方策を少年と一緒に考え、その手助けをしていくことが期待されます。

  「少年と一緒に考える」というのは、言葉にすると簡単ですが、実際には非常に難しいものです。自分が少年であった頃からは10年以上が経ってしまい、自分の子供もいない身にとっては、どのような言葉で、どのように話したら、少年の心に伝わるのだろう、と悩むこともしばしばです。ただ、「弁護士」というよりも、一人の人間として、少年と正面から向かい合おうと心がけています。その結果、幸いにも少年の方も何かを汲み取ってくれるものがあったようです。

 このように、あれこれと悩みながら少年と向き合って過ごし、やがて家庭裁判所で少年の処分を決める審判の日を迎えます。審判の際には、少年が自らの言葉で、非行事実やそれに対する反省、今後について話す機会があります。どの少年も、こちらが思っていた以上に、自分なりに非行について深く考え、しっかりと自分の言葉で話す様子を目の当たりにして驚くとともに、未熟で柔軟だからこそ少年には更生の余地が多くある、ということを実感しました。

 職務において、一年目であっても甘えは一切許されませんが、経験が浅い分、まだまだ柔軟性があって成長の余地が十分に残されていると信じて、日々の職務に着実に取り組んでいきたいと思います。

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