弁護士コラム

2014/03

専門分野か得意分野か

原田 雅紀

「ご専門は何ですか?」
プライベートで初めてお会いする方に、私が弁護士であることを伝えると、このように質問されることが良くあります。

正直なところ、この質問に対する回答はとても難しいのです。

私は、他の弁護士と比較すると、交通事故・損害保険の案件を扱うことが多いため、「交通事故」という回答を最初に思いつきます。

 ただ、すぐに「専門は交通事故です。」と回答することはためらってしまいます。
なぜなら、

「『交通事故が専門です。』と回答すると、『それ以外の分野は扱っていない。不得意。』との印象を与えてしまわないかな。」
「離婚・親子問題や債務整理(借金)問題もかなり多く扱っているので、得意分野と言って大丈夫かな。」
「同期の弁護士と比べると、建物明渡などの不動産案件も多い方。」
「中小企業から依頼されて契約書を作成したり、チェックしたりもしてるよな。」

 などと考えてしまうからです。

そこで、私は、「『専門』というわけではないのですが、経験上、交通事故を多く扱ってきたので、交通事故が『得意』です。でも、交通事故だけを扱っているのではなく、離婚・相続とか、借金とか、不動産問題とか、いろいろやっているんですよ。」と回答することが多いです。

 東京の都心部には、例えば、知的財産だけを扱い、それ以外の分野は扱わないような法律事務所があります。そのような法律事務所の弁護士は、迷うことなく「知的財産です。」と回答するでしょう。
しかし、いわゆる「マチベン(=町の弁護士)」と呼ばれる弁護士は、1つの分野だけを専門に扱い、それ以外の分野は扱わないというようなことはないと思います。例えば、離婚問題だけ扱っていますとか、刑事事件だけを扱っていますというような弁護士はほとんどいません。ただ、その逆、例えば、離婚問題だけは扱わないというような弁護士はいるかもしれませんが。

 町のお医者さんは、内科、整形外科、眼科などの専門ごとに開業することが多いですが、町の弁護士(マチベン)は、それとは異なり、あたかも弁護士1人1人が総合病院のようになっているのです。

 ただ、相談者や依頼者の方が、お医者さんに求めるように、弁護士にも「専門であること」を求めるのは当然だと思います。

 私は、必ずしも「専門」ではなくても、自分が担当する案件については、しっかりと調査、勉強することにより(幸いにも、当事務所には数多くの文献・書籍が揃っています。)経験を重ね、一つでも多くの分野を自信をもって「得意」と言えるよう、日々、頑張っていきたいと思っています。

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