弁護士コラム

2014/12

消費税と選挙と投票

前田 八郎

 先月21日に安倍内閣が衆議院を解散したため、今月14日に第47回衆議院議員総選挙が施行されます。安倍総理は、解散に関する記者会見において、今回の選挙では、消費税率引き上げ時期も争点の1つである旨を述べ、一方、野党の一党は消費税率の引き下げを公約に掲げました。そのため、今回の選挙では、消費税が重要なテーマの1つになります。

 そもそも消費税とは、平成元年4月1日(当時、竹下内閣)から導入された租税です。

 日本国憲法74条は、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」(ちなみに、この原則を「租税法律主義」といいます。)と定めていますので、わが国で、新たに租税を課すには、必ず国会議員で構成される国会の議決する法律によらなければなりません。そこで、竹下元首相は、国会において、昭和63年に「消費税法」を成立させて、同法に基づき翌年4月1日から消費税を導入しました。

 消費税導入当時の税率は3%でしたが、その後平成9年4月1日から5%に引き上げられ、さらに平成26年4月1日から8%に引き上げられました。ここでも租税法律主義に則り、消費税率引き上げの際には、都度、消費税法が改正されました。

 また、消費税率が8%に引き上げられた際には、あわせて「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」も成立しました。そして、同法は、その条文中に「消費税率の引き上げを踏まえて」や「消費税率が段階的に引き上げられることも踏まえ」という文言があるとおり、消費税率の段階的引き上げを前提にしており、同法に基づき消費税率は、平成27年10月1日からは10%に引き上げられる予定でした。もっとも、皆さんもご承知のとおり、10%への引き上げは、近年の経済状況等を考慮したうえで、延期されることになりました。

 ところで、現行の消費税法には、「消費税の税率は、100分の6.3とする。」と定められています。では、普段、我々が支払っている消費税率8%との差の1.7%はどうなっているのか。その答えは、地方税法にあります。地方税法では、地方税の1つとして地方消費税とその税率を定めています。具体的には、「地方消費税については、・・・消費税額を課税標準額とする。」と「地方消費税の税率は、63分の17とする。」と定められています。したがって、地方消費税の税率は、消費税法の税率(6.3%)の63分の17、つまり1.7%になります。普段、我々が支払っている消費税率は、消費税率6.3%と地方消費税率1.7%を合計したものだったのです。このように、租税法律主義のもとでは、租税に関する事項が、しっかりと法律で定められているのです。

 以上のとおり、租税法律主義のもとでは、課税するためには法律が必要になります。そして、その法律を作るのは国会であり、さらに、その国会を構成するのは国民から選挙によって選ばれた国会議員です。したがって、突き詰めると法律を作るのは国民ということになります。皆様の1票にはそれほど重要な意味があるのです。

 なにも、増税の是非や国政の在り方についてこの場で議論したいわけではありません。

 しかしながら、個人的には、近年の投票率の低さには少なからず不安感を感じます。

 当職の本コラムを読んで頂き、来たる14日に投票所に足を運ばれる方が1人でもいれば幸いです。また、14日以降に本コラムをご覧になられた方が、次回の選挙の際に本コラムを思い出して頂ければ幸いです。

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