弁護士コラム

2009/11

遺言の基礎知識(2)

浦田 修志

 前回は、遺言の方式についてご説明しました。今回は、遺言する際に注意することをご説明します。

 まず、個々の財産を遺言で譲り渡す場合は、その財産を特定する必要があります。「遺言者の有する財産全部」と書いて包括的に譲り渡すこともできますが、個々の財産を譲り渡す場合、たとえば、「自宅は長男に、賃貸中のアパートは妻に、○○銀行の預金は次男に」とお考えの場合、土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積で特定し(これらは登記簿に書いてあります)、預金は銀行名・支店名・預金の種類・口座番号で特定します。

  それでは、「自宅の土地の右半分を長男に相続させる」と遺言したらどうなるでしょうか。この場合、「土地の右半分」とはどの部分か分かりません。1筆の土地の一部を対象とする場合は、遺言する前に分筆するか、測量図で分筆可能な程度まで対象を特定した図面を添付する必要があります。

 次に、遺言で財産を譲り渡す場合、「相続させる」と書く場合と「遺贈する」と書く場合があります。「相続させる」を使うのは、譲り渡す相手が相続人の場合で、相続人以外の人に譲り渡す場合には、「遺贈する」を使います。「相続させる」と書くと、不動産の登記は譲り受けた人が単独で申請できますし、登録免許税が安いなどのメリットがあります。

  また、遺言書を書いたけれども、気が変わった場合はどうしたらよいでしようか。遺言は、遺言者が存命している限り、いつでも自由に取り消したり、変更することができます。しかし、遺言の取消・変更は遺言の方式に従って行う必要があります。すなわち、遺言の取消・変更も、自筆証書遺言や公正証書遺言によって行う必要があります。取り消すとか、変更するという言葉をボイスレコーダーに録音しただけでは、取消・変更の効果は生じません。ただ、前の遺言と抵触する内容の遺言書を後で書くと、抵触する部分については、前の遺言は後の遺言で取り消されたものとみなされます。また、自宅の土地を長男に相続させるという遺言をした人が、生前、自らその土地を他の人に売ってしまった場合のように、遺言と抵触する生前処分をすると、抵触する部分については、遺言は撤回されたものとみなされます。

 その他、相続や遺言について、ご不明の点がありましたら、弁護士にお問い合わせください。

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