弁護士コラム

2013/12

本読み

浦田 修志

 最近、久々に小説にはまっています。

  昔、小説にはまったのは中学生のころ。「○○文庫の百冊」の中で、純文学系を中心に、高校生にかけて片端から読みまくりました。今でもこのころの感動を覚えているのは、三浦綾子の「塩狩峠」や遠藤周作の「彼の生き方」など。大学生のころは主に推理小説の古典。名作と呼ばれる海外作品を読み漁りました。ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」、ディクスン・カーの「皇帝のかぎ煙草入れ」、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」、エラリー・クイーンの「スペイン岬の謎」、ホームズの短編など、今でも当時の文庫本を捨てられません。国内作品で印象深いのは、横溝正史シリーズや坂口安吾の「不連続殺人事件」など。司法試験の受験勉強中は歴史もの。特に吉川英治の「三国志」を何度も何度も読み返しました。「座右の銘は?」と聞かれたら、冤罪で捕えられた玄徳の恩師蘆植を助けようとしたときの張飛のセリフ「義を見て為さざるは勇なきなり」を挙げます。

  しかし、実務についたころから、小説と遠ざかり、全く読まなくなってしまいました。いつも仕事で事件の記録や文献など、字ばかり見ているせいか、仕事以外で字を見るのが嫌になったのかもしれません。表紙絵が素晴らしく、ほぼ全巻揃っていた横溝正史シリーズも、古本屋に売ってしまい、今思うと本当にもったいない。

 長いこと小説とは無縁の生活を送っていましたが、つい最近、阿部弁護士に百田尚樹の「永遠のゼロ」を借りて読んだのをきっかけに、小説の楽しさを思い出し、以来、昔の「本読み」に戻りかけています。読書の場所は主に電車の中。特に傾向もなく、話題作、人気作家、知り合いのお勧め、本屋で見かけて面白そうだと思ったものなど、乱読しています。中でも、若かりしころを思い出したのは、三浦しをんの「風が強く吹いている」。―「速く」ではなく「強く」走れ―。箱根駅伝という共通の目標に向かって一つになる仲間たち。ゼッケンをつけ、学校名が入ったユニフォームを着て、鉢巻しめて卓球の試合に臨んだ高校生のころの自分と、そのころの友達の顔を思い出します。思わず走り出したくなる一冊。

 頭の中一杯に想像の画面が広がる小説の楽しさ。今、渓流釣りは禁漁期間なので、しばらく小説にはまりたいと思います。

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