弁護士コラム

2015/05

インフォームされてコンセントしたい

南竹 要

 皆様いかがお過ごしでしょうか。

ここ二日、日経平均株価は午前下げて、午後ETFと思われる日銀の買付により上げて終わっている様子。ロイターは、5月1日の記事で、日銀が実質的にユニクロの筆頭株主になる規模の買い付けであり、倫理的に問題あると報道しています(「焦点:ETF増額に期待、日銀がユニクロ「大株主化」の副作用も」)。

 そのうち、底が抜けると思いつつ、近い将来や老後なんかを想像しながら、歯医者にクリーニングに行ったのです。
 そこで、「レントゲンを見ると、埋まっている左下の親不知を包んでいる嚢胞が大きくなっているので取った方がいいですね」といわれ、「じゃぁ抜歯してください。」と答えるも、「口腔外科で全身麻酔かな」との返答に愕然。「何それ、この前ピロリ菌除菌したばっかりでしばらく病院はいいやと決めたのに!」と心の中で叫びましたが、ここから、解決すべき問題に対するアプローチを始める必要性を感じたのでした。

 まず病名、「含歯性嚢胞」というらしいということを調べ、まぁ珍しくないみたいだ。しかし、切除する際、骨は削る、神経と接している場合神経に麻痺が起こる可能性があるなどなど自らの持つリスクの大きさにぞっとしたので、このまま医師に丸投げしてはならないと思い、さらに予習。

 ここからが職業病でして、判例秘書(判例検索システム)に、「口腔外科 嚢胞 麻痺」などとキーワードを入れますと、「最悪のケース」が多数出てきます。

 医療訴訟の裁判記録は、医学について、医学の素人である裁判官を説得できるように、弁護士がある意味「翻訳」(全ての専門用語に定義を与え、論理的につなぎなおす)して形成されているので、とある症例に関し、少ない労力で、必要かつ高度な医学情報が学習できますし、どこまでが人為的ミスで、どこまでが医師に帰責できない、つまり、患者が甘受すべき結果とされがちなのか、相場観が得られます。

 裁判例から、「オトガイ神経麻痺」とかいうキーワードが出てきたので、神経を傷つける可能性について、変な名前だなぁと思い、この辺りの神経がどうなっているか、「オトガイ」をググるわけです。そうすると、ここに神経の種類とそこを侵襲した場合に残る麻痺が書いてある。

 あくまで感覚神経であって、「鈍」の方に麻痺するのか、しかもミスでなくても残るっぽいと。

 診察では、CT画像の結果を見て、どの神経がきわどいのか聴いてみようということにします。

 とりあえず、マルチスライスCTをとってもらいましたが、歯科界の画像診断の最先端はモリタの3DX FPD8っぽいのでそれで撮影しなくていいのかとか気になっています(余計か)。

 充分な情報やリスクをインフォームされるためには、情報を受け止める知識が絶対に必要なはずです。医師もわかりやすく説明するはずですが、このわかりやすさが情報のもつ重要性を霞ませてはいけないのです。

 この点は、私も自らの職務上強く意識していることです。現在裁判官をしているロースクールの同期の言葉がいつも私の胸に共鳴しています。

 「分かり易い記述を心掛けた。ただし、ここにいう「分かり易い記述」とは、「分かり易い議論についてだけ詳細に説明し、難しい議論については適当な説明に止めておく」ことによって実現される「分かり易さ」をいうのではない。「難しい議論については難しいなりに、緻密な論理をもって粘り強く説明する」ことによって実現される「分かり易さ」を追求した。」(金洪周「要件事実の理解」はしがきより)

診察いただく先生と信頼関係を築いて、夏休みころを利用して抜歯し、もはや一点の曇りなく、奥歯に物が挟まったような説明がそもそもできない姿にバージョンアップすることを計画しておりますので、生暖かく見守っていただければ幸いです。

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