弁護士コラム

2021/01

民法(債権法)改正―消滅時効

室之園 大介

 前回のコラムで,債権法改正(2020年4月1日施行)についてご紹介しました。今回は,債権法改正のうち,消滅時効に関する改正についてご紹介したいと思います(なお,このコラムでは,改正後の民法を「新民法」,改正前の民法を「旧民法」と表記しています。)。

 まず,そもそも「消滅時効」とは何かというと,ある権利を一定期間行使しなかった場合,その権利が消滅してしまう制度です(この「一定期間」は「時効期間」と呼ばれています。)。

 債権法改正前は,消滅時効について,一応の基本的なルール(より正確には,「債権」についての一般的なルール)として,「権利を行使することができる時」から「10年間行使しないときは,消滅する。」とされていたものの,権利の種類によってはそのルールが適用されず,時効期間が3年,2年,1年,5年など細かく分けられていました。
 今回の改正では,それらの細かな区分の多くが廃止され,それらの権利については上記の基本的なルール(時効期間10年)が適用されることになり(新民法166条1項2号),時効期間の統一化が図られました。
 ただし,基本的なルールがもう1つ追加され,「権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」にも消滅することとされました(新民法166条1項1号)。つまり,改正後の基本的なルールとしては,①「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」,②「権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」のどちらかに該当する場合には,消滅時効が完成して権利が消滅してしまうことになります。その結果,改正後は,これまで時効期間が10年だった権利が5年で消滅してしまう可能性があるので,注意が必要です。
 また,給与債権(時効期間2年,労働基準法115条),不法行為債権(時効期間3年,新民法724条1号)など一部の権利については,時効期間が従前のままとされていますので,この点についても注意が必要です(なお,不法行為債権のうち,「生命又は身体を害する不法行為」債権については,時効期間が5年に改正されました。新民法724条の2。)。

 次に,消滅時効については,裁判を起こして相手に請求した場合などに,時効期間のカウントがリセットされ,再び最初からカウントされる「時効の中断」という制度がありました。また,カウントがリセットされるわけではありませんが,時効の完成を一定期間妨げる「時効の停止」という制度もありました。
 今回の債権法改正では,制度自体は存続していますが,「時効の中断」は「時効の更新」に,「時効の停止」は「時効の完成猶予」に,それぞれ用語が変更されました(新民法147条など)。また,どのような場合に時効が「更新」又は「完成猶予」されるのかという点についても変更が加えられました。一つ例を挙げると,今回の改正で,「権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたとき」は,一定期間,時効の完成が猶予されることとされました(新民法151条)。これは,債権法改正前にはなかった時効の完成猶予事由(停止事由)であり,大きな変更点の一つとなっています。

 消滅時効に関する改正については,原則的なルールとして,施行日前に債権が生じた場合には,旧民法が適用されることとされています(附則10条4項)。ただし,例外もあり,例えば,「生命又は身体を害する不法行為」債権については,施行日前に生じた債権であっても,施行日時点で時効(時効期間3年)が完成していなければ,新民法(時効期間5年)が適用されることとされています(附則35条2項)。また,時効の更新・完成猶予については,施行日前に発生した債権であっても,施行日以後には新民法が適用されることとされています(附則10条2項。なお,施行日前に時効の中断・停止が生じていた場合には,その中断・停止については,施行日以後も旧民法が適用されます。)。

 ※本コラムにおける説明はあくまで概略であり,詳細についての説明は省略されておりますので,実際に権利が時効で消滅しているかを確認する場合は,必ず弁護士等の専門家にご相談ください。

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