2021/7
「文献の文献」を探す
芦原 康貴
先日、約2年半続いていた民事事件の訴訟について判決言渡しがなされ、勝訴判決を得ることができました。
この訴訟は、事実関係に大きな争いはなかったのですが、根拠となる法律及び制度の仕組みや解釈といった部分が争点となっていましたので、主張を組み立てる際には、法律基本書、裁判例及び裁判例の評釈等の文献をいかに正確に読み解き、理路整然とした説得力のある主張ができるかという点が重要でした。
説得力のある主張をするにあたり、まず私は文献調査に取り掛かりました。
私が文献調査において重要であると考えていることは、事件との関係で適切な文献をいかに早く探し出すことができるかということです。世の中には膨大な数の法律文献が存在しますので、1つ1つの文献の内容を確認していたらそれだけで膨大な時間がかかってしまいます。適切な文献を探し出したとしても、内容を理解し主張へと落とし込むという重要な作業に時間を割くことができなければ意味がありません。
そこで、私が実践した方法は、「文献の文献」を探すという文献調査方法です。
この調査方法は、私が大学時代に苦い経験をしたことがきっかけで実践するようになりました。
私は大学3年から4年まで会社法ゼミに所属しており、ゼミの主な活動は判例研究及び研究内容の発表でしたので、はじめ私は文献を調査するにあたり、文献を片っ端から読み漁れば問題ないと思っていました。
しかし、文献を数多く読むことが目的となってしまい、内容を理解することが疎かになっていたため、いざ判例研究の発表という段階になってゼミの先輩方に鋭い質問をされてもあやふやな回答になってしまうという苦い経験をしました。その後、あるゼミの先輩に教えていただいた方法が、「文献の文献」を探すという調査方法でした。
まず、ある事件との関係で法律文献調査を行う以上、事件との関係で問題となっている法律、条文及び法制度等は何かを考えることが調査の出発点となります。
次に、問題となっている法律、条文及び法制度に関する文献をいくつかピックアップします。
そして、ピックアップした文献が参考文献に挙げている文献の中で共通する著者名、文献名、及び裁判例の評釈等がないか確認します。
以上が、「文献の文献」を探す調査方法のおおまかな手順です。
共通する文献名等を探し出すことができた場合、その文献を、私は「文献の文献」と呼んでいます。
この方法によれば、膨大な数の文献の中から、理解することが必要不可欠な文献を効率的に探し出すことができ、文献を「探す」ことではなく文献を「理解」することに時間を割くことができます。
そして、この方法は、法律文献の調査に限定されるものではないと考えられます。もし、本コラムを読んでいただいた方の中で文献調査をしないといけない場面に出くわした際には、ぜひ実践してみてください。