弁護士コラム

2022/04

強制執行手続が少し使いやすくなりました

浦田 修志

 本年4月で当事務所は開設20周年を迎えました。これも、ひとえに、依頼者の皆様、顧問先の皆様をはじめ、当事務所をご信頼くださる皆様のおかげです。深く感謝申し上げます。今後ともご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
 さて、今回は、令和元年の民事執行法の改正により、強制執行手続が少し使いやすくなったというお話です。強制執行とは、たとえば、債務者の財産を差し押さえて換金し、債権者への弁済に充当する手続(金銭執行)など、国家機関によって権利を強制的に実現する手続のことです。強制執行は裁判所に申立をして行いますが、そのためには、「債務名義」といって、確定判決など請求権が存在することを明らかにする文書が必要です。しかし、金銭の支払を命じる勝訴判決を得ても、相手方の財産がどこにあるのか分からなければ、差押をしようがありません。実効性が高いのは預金の差押ですが、従来は、債務者が預金している銀行名のほか、支店名まで分からないと差押ができませんでした。しかし、債権者にとっては、債務者が取引している銀行など知らないことが多く、ましてや取引支店など分かりませんので、このような場合は預金の差押ができませんでした。
 こうした中、令和元年の民事執行法の改正により、「第三者からの情報取得手続」という制度が新設され、一定の要件の下で、不動産に関する情報、給与(勤務先)に関する情報のほか、預貯金に関する情報が取得できるようになりました。このうち預貯金に関する情報取得手続は、確定判決等の「債務名義」を得た債権者が裁判所に申立をすると、裁判所は債権者が指定した銀行に「情報提供命令」を発し、これを受けた銀行は、債務者が口座を持っている否か、持っている場合にはその支店名、口座番号や残高を回答する義務を負うことになりました。この申立をする場合は、債権者は、債務者の職業や住所などから取引がありそうな銀行の本店を調べて指定すればよく、裁判所の情報提供命令も本店に対して発出されますので、債務者の取引支店が分からなくても申立ができます。そして、この情報提供命令によって債務者の預金がある銀行名、支店名や残高が分かれば、次にその銀行の預金を差し押さえることができます。裁判所から情報提供命令が発出されたことは、債務者にも知らされますが、銀行の回答があってから1か月経過後に債務者に情報提供命令が送達される扱いなので、債務者に知られないうちに預金の有無や額を調査し、差し押さえることができるようになりました。
 他にも、債務者の財産状況を調査するための制度として、財産開示手続がありますが、これまでは、債務者が手続に協力しなくても、過料の制裁しかなかったため、実効性が乏しいと言われていました。しかし、令和元年の民事執行法の改正により、財産開示手続違反の罰則が強化されるなど、債務者の財産を調査する手続の実効性を高める改正がなされました。先に述べた、不動産に関する情報や給与(勤務先)に関する情報の取得手続については、この財産開示手続を先に行う必要があったり、さらに、給与(勤務先)に関する情報の取得手続については、申立ができる債権者が限定されているなど、少し要件が重くなっていますので、預貯金に関する情報取得手続が最も使いやすいと言ってよいと思います。
 強制的な回収手続をお考えの場合、当事務所にご相談いただければと思います。

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