2022/6
法律相談
室之園 大介
法律相談は,「その事案に法律を適用するとどうなるか」という見通しをお答えするのが主な目的であり,通常,相談者もそれを求めていらっしゃいます。ですので,まずは,その見通しを説明・回答するのが弁護士の役割ということになります。そして,基本的には,その見通しが正確であればあるほど良質な法律相談ということになるでしょうから,弁護士としては,その見通しの精度を上げるために,より幅広く,より深く,法律に関する知識や感覚を身に付けることが非常に重要な課題となります。
ですが,個人的には,その他にもいくつか意識していることがあります。
一つは,状況・問題点・選択肢を整理する,ということです。これはどういうことかというと,法律相談では,相談者が,問題を解決するために何をどうのように考えたらいいのか全く分からない,とにかく困っていてどうすればいいか皆目見当がつかない,ということが少なくありません。また,法律相談では,まずは弁護士が相談者から事情をうかがうわけですが,何も知らない第三者に事情(事実関係)を一から順序立てて分かりやすく説明するというのは非常に難しく,無秩序に,あるいは五月雨式に事実関係が出てくることも珍しくありません。そこで,まずは,相談者からうかがった事情を,時系列等に従って整理したり,あるいは,漏れがないように聞き出したりして,状況を整理します。状況を整理すると,多くの場合,何が原因で問題が生じているのか(問題の所在)が自ずと浮かび上がってきます。問題の所在が分かると,あとはその問題点についてどのように対処するかを考えればいいので,どのような選択肢があるのかが浮かび上がってきます。最初からいきなり解決策を考えるのではなく,まずは状況・問題点・選択肢を整理するのが重要であり,逆に,状況・問題点・選択肢を整理すると,多くの場合,解決策や選択肢が見えてきます。
もう一つ意識している点は,法律の枠にこだわらない,ということです。法律相談を受けていると,その事案は法律ではうまく解決できない(法律を適用すると,相談者にとって不利な結果となる。)ということがよくあります(実は,法律ではうまく解決できないことが分かることも非常に重要・有益ではありますが。)。もし,「その事案に法律を適用するとどうなるか」ということだけを回答するのであれば,法律相談はそこで終了になります。しかし,私は,できる限りその先についてもアドバイスするように心がけています。弁護士という職業は,仕事柄,ありがたいことに,様々な業種や社会的制度に関わる機会が比較的多く,法律以外の分野についても知識や経験を有していることがあります。そのような知識や経験を活かして,法律以外の観点からアドバイスを提供できることもあります。
上記のような点を意識しながら法律相談を受けていると,法的にはいいアドバイスを提供できなくても,喜んでいただけることがしばしばあります。
皆様も,まずは一度ご相談いただければ,何かしらお役に立てるかもしれませんので,法律相談を是非ご活用いただきたいと思います。