2022/12
相続登記が義務化されます
浦田 修志
令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。これまで、不動産を相続しても、登記は義務ではなく、亡くなった方の名義のまま、数十年が経過し、その間にさらに相続が発生することも珍しくありませんでした。しかし、登記上、所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても所在不明で連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」が増え、国土の約22%にもなるとして、社会問題に発展しました。法務省のウェブサイトによると、所有者不明土地になる原因の63%が相続登記の未了、33%が住所変更登記の未了とのことです。こうした所有者不明土地の問題を解決するため、令和3年の民法・不動産登記法の改正等により、様々な施策が実施されることになりました。そのうちの一つが相続登記の義務化です。
すなわち、相続や遺贈により不動産を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に移転登記を申請することが義務付けられました。さらに、遺産分割が成立した場合には、その内容に沿った移転登記を申請することも義務付けられました。
他方、3年以内に遺産分割が成立しないこともあるため、相続人が簡易に申請義務を履行できるよう、「相続人申告登記」という制度が新たに設けられました。これは、登記名義人について相続が開始したことと自分がその相続人であることを3年以内に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなす制度です。この申出をすると、登記官が申出をした相続人の氏名・住所を職権で登記に付記しますので、相続登記を申請するよりも簡単ですし、登記を見れば相続人を把握することができるようになるわけです。相続人が複数いても、各相続人は単独で申出ができますし、他の相続人を含めて代理申出をすることもできます。
たとえば、相続開始後3年以内に遺産分割が成立すれば、その内容に沿った登記を行うだけで足りますが、3年以内に遺産分割が成立しなかった場合には、3年以内にまず相続人申告登記の申出を行い、その後、遺産分割が成立したら、遺産分割の成立から3年以内にその内容に沿った登記をすることになります。
もし、正当な理由がないのに、登記申請を怠ると、10万円以下の過料に処せられます。ここでいう「正当な理由」の具体例は、通達などで明確化される予定ですが、相続人が極めて多数で、資料の収集や相続人の把握に時間を要する場合や、遺言の効力や遺産の範囲等が争われている場合、申請義務者が病気の場合などが想定されています。