弁護士コラム

2024/9

法定養育費制度について

室之園室之園 大介

 2024年5月に改正民法が成立し、離婚後の親権に関して共同親権を選択できるようになることが大きな話題を呼んでいました(これまでは、離婚後は父母のどちらか一方だけが親権を有する単独親権しか選択できませんでした。)。また、この改正では、法定養育費制度も新設されましたが、これについては共同親権に比べるとあまり知られていないのではないかと思いますので、簡単にご紹介したいと思います。

 養育費は、離婚後の子どもの養育にかかる費用(子どもの衣食住、教育、医療などにかかる費用)のことで、子どもを監護している親が元配偶者に対して請求することができるものです。養育費は、具体的な金額や支払方法等について元配偶者と合意することができた場合には、その合意に基づいて請求することができますが、合意することができなかった場合には、調停、審判、訴訟などの法的手続を行わなければ請求することができませんでした。それが、法定養育費制度ができたことによって、調停、審判、訴訟などの法的手続を行わなくても、一定の金額の養育費を元配偶者に請求することができるようになります(請求できる金額は、ざっくりいうと、最低限度の生活の維持に要する額として法務省令で定められた額です。)。元配偶者との合意に基づいて請求するのではなく、法律の規定に基づいて請求するので、法定養育費と呼ばれます。

 また、今回の法改正では、養育費に「先取特権」という権利が認められることになり、元配偶者が養育費を支払わない場合には、元配偶者の財産(給与や預金口座など)を、調停、審判、訴訟などを経ずに差し押さえることができるようになります。

 先取特権は、法定養育費にも付与されるため、養育費について元配偶者と何も取決めをしていない場合でも、法定養育費に基づいて、元配偶者の財産を差し押えることができるようになります(ただし、元配偶者が支払能力を有しないなど、一定の場合には差し押えることができません。)。

 以上の法定養育費制度を含む改正民法は、2026年5月までに施行される予定となっています。

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