2024/10
初めての最高裁判所
原田 雅紀
令和6年10月、私の弁護士20年目がスタートしました。
そして、20年目の初日にあたる令和6年10月1日、最高裁判所の弁論期日に初めて出廷してきました。
日本の裁判における審級制度は、公平かつ慎重な審理を実現するために、原則として、裁判を3回受けることができる三審制を採用しています。
そして、その頂点となり、最終的な判断を下すのは最高裁判所です。
ただし、最高裁判所は、事実審である地方裁判所や高等裁判所と異なり、憲法違反や法令の解釈が問題となる場合などに限って審理をする法律審です。
最高裁判所に上告・上告受理申立をしても、上告棄却決定・上告不受理決定で終わってしまうことがほとんどで、最高裁判所で弁論期日が開かれて審理されることは極めて少ないのが現状です。
そのため、私は、これまで1回も最高裁判所の弁論期日に出廷することはありませんでした。
しかし、私が担当している事件で、事実には全く争いがないのですが、民法の解釈が争点となる案件があり、しかも、その争点は過去の裁判などで十分に議論されておらず、私たちと行政庁との間で見解が異なってしまいました。
そのため、令和2年10月、私たちが横浜地裁に訴訟提起し、その後、横浜地裁及び東京高裁の判決を経て、ついに最高裁で審理されることになったのです。
最高裁が高等裁判所の結論を変更することなく維持する場合には、必ずしも弁論期日は開かれず、他方、高等裁判所の結論を変更するためには弁論期日を開くことになります。
そして、今回の事案では、東京高裁で私たちの主張が認められていました。
そのため、最高裁判所が弁論期日を開いたということは、東京高裁の判決が変更されてしまう可能性があります。できれば、そのまま弁論期日が開かれることなく上告棄却・上告不受理決定で終わって欲しかったのですが・・・。
とはいえ、弁論期日が開かれたといっても、必ず変更されるわけではなく、最高裁判所が重要な争点であると考えたような場合には、弁論期日を開いて、最高裁判所としての判断を示した上で、高等裁判所の結論を維持する(上告棄却)こともあります。
最高裁での弁論期日は地方裁判所や高等裁判所といろいろ異なりました。
とりわけ、地方裁判所や高等裁判所では、当事者の主張を記載した書面を提出するだけで終わることが多いのですが、最高裁判所では、争点について意見を当事者が実際に述べる、まさに弁論することになるのです。
当日は緊張していたからか、最初の第一声は少し声が裏返ってしまいましたが、その後は無事に手続を終えることができました。
ちなみに、最高裁判所は、約50年前に建築された、とても大きく重厚感のある石造りの建物で、その内部はホテルのようでした。
約2週間後に最高裁判所の判決が出るのですが、私たちの主張が認められことを祈る日々です。