弁護士コラム

2025/9

【ご存知ですか、裁判所委員会】

浦田 修志

 皆様、地方裁判所委員会、家庭裁判所委員会のことをご存知でしょうか。
 裁判所委員会とは、全国50か所の地方裁判所・家庭裁判所の本庁に設置されている委員会で、神奈川県内にも、横浜地方裁判所委員会と横浜家庭裁判所委員会が設置されています。裁判所委員会は、裁判所の運営に国民の意見を反映させるため、司法制度改革審議会の意見書に沿って、平成15年に設置されました(家庭裁判所委員会は、それ以前からありましたが、形骸化していたため、司法制度改革を機に大幅な制度改正がなされました)。裁判所というと、市民生活から縁遠く、なかなかなじみの薄い存在ですが、裁判所の運営に国民の意見を反映させることは、裁判所に対する国民の理解と信頼を高め、司法の国民的基盤を強化することに繋がると考えられたのです。そのため、委員のうち過半数は裁判官・検察官・弁護士以外の学識経験者(市民委員)から構成されています。
 裁判所委員会で取り上げられるテーマとしては、たとえば最近では「裁判手続のデジタル化」「女性職員の活躍推進」などがありますが、委員から議題を提出することもできますし、裁判所は裁判所委員会で出された意見に対し、検討結果を報告することになっており、単に意見を聞くだけではなく、双方向の議論が可能な仕組みになっています。この裁判所委員会での意見に沿って、裁判所の案内表示が改善されたり、リーフレットが見直されたり、裁判所に来た人に対して利用者アンケートを実施したところもあります。
 アメリカでも一部の州では、コートモニターといって、市民のボランティアが裁判所に出向いて、施設面や裁判所職員の対応、裁判官・検察官・弁護士の言動を評価して報告書にまとめ、裁判所に改善を求めたりしています。
 裁判所委員会では、どうしても裁判所からの説明が多くなってしまいがちですが、裁判所委員会が本来の役割を発揮するためには、市民委員から活発な意見を多く出してもらえるような運営が必要ですし、裁判所委員会での議論を踏まえて、裁判所がどのように対処したのかを次回の委員会で報告するようなフィードバックが重要です。日弁連も、全国の裁判所委員会の運営に関心をもっており、担当者の会議を開催して、各地の状況やテーマ設定、特色のある活動などを共有しています。
 司法は時として政治と緊張関係に立ちます。司法の独立を確保し、司法が本来の役割を果たすためには、司法が国民的基盤によって立つことが重要です。横浜地方裁判所委員会、横浜家庭裁判所委員会を含め、全国の裁判所委員会は毎回の議事概要を裁判所のウェブサイトで公開していますので、ぜひ市民の皆様にも関心をもっていただきたいと思います。

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